2019年7月初旬、NVIDIAは一般ゲーマー向け製品とプロフェッショナル向け基盤技術の両輪において、極めて重要な発表を行った。性能を大幅に底上げしたGeForce RTX SUPERシリーズ(RTX 2060 SUPER、2070 SUPER、2080 SUPER)を市場へ投入し、さらにCGの世界的祭典SIGGRAPHにおいて、ピクサーのUniversal Scene Description(USD)を中核に据えたリアルタイム3Dシミュレーション協調環境NVIDIA Omniverseのプロトタイプを初公開した。

GeForce RTX SUPERシリーズ:レイトレーシング普及を加速

競合製品に対抗し、RTXエコシステムの普及を決定づけるべく投入されたSUPERシリーズは、極めて実効的な強化を施されていた:

  • GeForce RTX 2060 SUPER:VRAMを従来の6GBから8GB 256-bit GDDR6へと増強し、CUDAコアも2176基へ拡充。1440pでのレイトレーシング有効時でもメモリ不足に陥ることなく、初代RTX 2070に迫る性能を発揮。
  • GeForce RTX 2070 SUPER:上位ダイTU104を採用し、2560基のCUDAコアを搭載。499ドルの価格を維持したまま、初期型RTX 2080と同等のパワーをユーザーへ提供。
  • DLSS 2.0への布石:増強されたTensorコア群は、数ヶ月後に登場し映像の鮮明さで世界を驚嘆させた「DLSS 2.0」を快適に動かす理想的なハードウェア基盤となった。

Omniverseの初登場:3D制作における「Googleドキュメント」革命

SIGGRAPH 2019で披露されたOmniverseの構想は、世界のCGクリエイターや産業エンジニアを驚かせた。従来の3D制作現場では、Autodesk Maya、3ds Max、Unreal Engine、Adobeといった異なるソフトウェア間でのデータ互換性やインポート/エクスポートの手間が長年の深刻な課題であった。

NVIDIAが提示した革新性は以下の点にある:

  1. ピクサー開発の「USD(Universal Scene Description)」を共通言語として採用: 形状、材質、アニメーション、物理情報を包括するオープンなUSD規格をベースに据え、異なるツールが同一データをリアルタイムに共有。
  2. RTXエンジンによるリアルタイム協調レンダリング: 地球の裏側にいる複数のクリエイターが同一の3D空間に同時アクセス。一方がMayaでモデルを修正し、もう一方が別ツールでライティングを調整する様子が、RTXレイトレーシングによって物理的に正しい陰影で即座に同期描画された。
  3. PhysXによる物理シミュレーションとMDL(マテリアル定義言語)の統合。

歴史的意義:産業メタバースとロボティクスAIの揺りかご

2019年に産声をあげたOmniverseは、単なるCG制作補助ツールの域を遥かに超えていた。ジェンスン・フアンCEOは、将来の自動運転車や自律型ロボットが現実世界に配備される前に、「物理法則が完全に再現された仮想空間」で何百万時間ものシミュレーション学習を経る必要性を見抜いていた。この着想が、のちのロボットシミュレータ「Isaac Sim」や世界のスマート工場を支えるデジタルツインインフラへと大成したのである。

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